私の友人で180cm以上ある人は大体よく寝ています(笑)

今回は「寝る子は育つは本当か?」というテーマについて現役の医師に記事を書いていただきました。

筆者紹介:米澤利幸
島根医科大学(現島根大学医学部)卒業
福岡大学大学院修了(医学博士)
日本精神神経学会認定専門医
赤坂心療クリニック院長

はじめに

寝る子は育つ!とはよく言われるものの、本当に寝る子は育つのでしょうか?これについての回答は、「イエス」でもあり「ノー」でもあります。体重については、これはもう「寝る子は育つ」はまさにその通りでしょう。

健康的であるか否かは別として、同じ量のカロリーを摂取しているのなら動かずに寝ている方が明らかに体重は増えて行きます。

ところが、正常な睡眠時間を超えて長く眠っている方が、身長はより伸びて行くのかどうかについては「イエス」とはいえないようなのです。以下に、身長の伸びと睡眠時間について考えていくことにします。

身長はどのような要素によって決まるのか?

米国国立衛生研究所の関連サイトによれば、ヒトの身長は多くの遺伝子が関与して決まるため、どこまで子供の背が伸びるのかを正確に予測することは難しいとする一方で、各個人の身長は、その大きな部分を遺伝的な要素によって影響を受けるとしています。

ただし、身長への影響度は遺伝に比べれば少ないものの、環境要因によっても影響されるともしているのです。

この環境要因のなかで身長に最も大きな影響を及ぼすのが、栄養であることは間違いありません。

しかし、睡眠も身長には影響を与えます。

では睡眠と身長にはどのような関係があるのでしょうか?

次項以降で解説することにします。

背を伸ばす成長ホルモンの分泌と睡眠の関係は?

成長ホルモンは、骨を伸ばすことにより背を伸ばす働きがあり、子供のとき不足すると小人症となるなど子供の成長には欠かせないホルモンです。

そして、成長ホルモンの多くが睡眠初期に分泌される(シカゴ大学[米国]のVan Cauterらのレビュー論文)ことが分かっています。

ワシントン大学[米国]の研究によれば、成長ホルモンの分泌のピークは、最初に訪れる深い睡眠の始まりとともに生じ、それより少ない小さな分泌のピークが深い睡眠の間に生じるということです。

さらに、睡眠に入るのを2~3時間ほど我慢させると、成長ホルモンの分泌ピークもそれに伴って後ろにずれることが分かりました。ところが、そのずれたピーク時の成長ホルモンの分泌量は、普通に睡眠に入ったときよりも少ない傾向があったのです。

この報告でポイントとなるのは、成長ホルモンの分泌量は睡眠時間(どれだけ長く眠っているか)とは関係が薄いけれども、睡眠に入る時刻が通常より遅くなると、成長ホルモンの分泌量が低下するということでしょう。

要するに、自然な睡眠に入るときに生じる眠気を我慢し夜更かしして勉強したりゲームに興じるなどすると、成長ホルモンの分泌量が減って「背の伸びが悪くなる」可能性があるということです

睡眠と身長はどのような関係があるのか?

1日の総睡眠時間が長いほど、そして、うたた寝の回数が多いほど「幼児(生後4〜17ヶ月)」に見られる飛躍的な身長の伸びは大きかったという報告(エモニー大学[カナダ])があります。

その一方で、ニューヨーク州立大学オールバニ校の研究では、「思春期」の子どもの睡眠時間と身長の伸びる早さには関連が認められませんでした。

また、ガイズ病院[英国]の報告によると、「5~11歳」の子供については睡眠時間と身長の間には弱い関係が認められたのみであり、睡眠時間は身長に重要な影響を与えないと結論しています。

さらにUniversity Children’s Hospital[スイス]の研究においても、「1~10歳」の年齢では、身長を含む身体的成長と睡眠時間の間に関係は認められなかったようです。

これらの研究は、睡眠障害のない健常な子供での知見でしたが、睡眠に障害を来す閉塞性無呼吸症候群(無呼吸により睡眠が妨げられる病気)の子供について調べた昆山市第一人民医院[中国]の調査においては、無呼吸症候群の子どもは、健常なこどもに比べ身長が低く成長ホルモンの量も少ないことが分かりました。そして、無呼吸症候群の原因である閉塞を取り除く治療を行なった3ヵ月後には、健常な子供と比べても成長ホルモンの血中濃度に差がなくなったとしています。

この結果から睡眠時の無呼吸は、睡眠を妨げることによって成長ホルモンの低下をひき起こし、身長の伸びにも悪影響を及ぼすのだと考察しています。

これらの研究報告から言えることは、睡眠障害のない健常な子供(幼児期を除く)の場合は、睡眠時間が身長に大きな影響を与える可能性は低いということです。

結局、寝る子は育つの?

最初に「寝る子は育つのか?」についての回答は「イエス」でもあり「ノー」でもあると述べましたが、その示すところは、「幼児期には寝る子は育つ」けれども、「幼児期を過ぎれば夜更かしする子の背の伸びは悪くなる!」ということになるでしょう。

これまで述べてきたように、幼児期を除いて睡眠時間が長いか短いかに関わらず、子供の成長に大きな影響を及ぼす成長ホルモンの分泌量は、睡眠に入って最初に訪れる深い睡眠初期の分泌量によって左右され、かつ、寝つく時刻が遅くなると、ピーク時の成長ホルモン分泌量が減ってしまいます。

つまり幼児期以降の子供では、夜更かしして勉強やゲームをするより、夜更かしせず朝早く起きて勉強やゲームをする方が、背の伸びを大きくすることができるということですね。

子供の背を伸ばしたいときには、子供に夜更かしさせないように注意しましょう。