子供の背を伸ばしたい!という時にはどのような栄養素が必要なのか?

現役の医師に記事を書いてもらいました!

筆者紹介:米澤利幸
島根医科大学(現島根大学医学部)卒業
福岡大学大学院修了(医学博士)
日本精神神経学会認定専門医
赤坂心療クリニック院長

はじめに

先進45カ国における栄養、遺伝マーカーおよび国の発展をしめす指標を調査したマサリク大学(チェコ)の報告では、国別の若者の身長差を最も説明する要因は栄養であったとしています。これは、身長に与える栄養の影響が、非常に大きなものであるということを示す結果ですね。ここでは、どのような栄養素が子供の背を伸ばすために必要であるかについて解説します。

背が伸びるとは?

日本人の身長は平均で、生まれたときには約50cmであったものが、17才時には男の子で170cmほどまでに伸びていきます。この背の伸びは、主に脚の骨と背骨(椎骨[ついこつ])が伸びることによって得られるものです。

背骨を構成している椎骨は、全部で24個あって同じように大きくなっていきます。これに対し脚の骨の伸びは、その大半を大腿骨と脛骨(けいこつ)という2つの骨の伸びによるものです。なお、脛骨の外がわに腓骨(ひこつ)という骨がありますが、脛骨とシンクロして伸びていくうえ脛骨よりも短いため、脚の伸びは大腿骨と脛骨によると考えていいのです。

ところで、この大腿骨と脛骨は、管状の長い骨で長管骨といわれ、その構造は骨の片側の端からもう一方の端にかけて、「軟骨-骨端軟骨版-骨-骨端軟骨版-軟骨」という構成になっています。骨端軟骨版に挟まれた骨の部分を骨幹(こっかん)とよびます。

この長管骨を例にとって背の伸びるメカニズムを説明すると、骨端軟骨板(成長板)で軟骨が作られ、その作られた軟骨がカルシウムを取り込んで骨に変化して骨幹が伸び、全体として骨が伸びていくのです。椎骨にも長管骨と同様に成長板が存在して、同じようなメカニズムで椎骨も伸びていくことになります。

頭蓋骨や足首より下の足の骨も身長の伸びに関与しますが、その割合はわずかなものであり、子供の背が伸びるのは、主に24個の椎骨と大腿骨および脛骨が伸びることで生じると言っていいでしょう。

背(骨)を伸ばすために必要な主要栄養素は?

「背が伸びる=骨が伸びる」ということなのですが、最終的な骨のサイズは、子宮内や思春期までの栄養供給状態に影響されるようです(A.プレンティス:MRC Human Nutorition Research[英国])。

骨が伸びるためには、タンパク質、カルシウム、リン、マグネシウム、亜鉛、銅、マンガン、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンKなど様々な栄養素が必要です。これらの中でも、とりわけカルシウムとタンパク質およびリン、ビタミンDが重要でしょう。これら4つの栄養素について、以下に簡単に説明します。

・カルシウム
日本人のカルシウム摂取推奨量(1〜17才:以下同様)は、1日あたり400〜1000mgであるのに対し、摂取実績(「平成27年国民健康・栄養調査結果の概要」における1〜19才のデータ:以下同様)は436〜657mgであり、カルシウムは不足がちとなる栄養素です。

このカルシウムについて、16~18歳の子供に12~15ヶ月間1000mgのカルシウムを毎日補充した研究(Cambridge Bone Studies)があります。この研究によれば、男の子では、身長を含めた骨格の増大とカルシウムの補充に関連性が認められたとしています。

この結果についての私見を述べると、上記の研究結果は、カルシウムは通常の食事では十分量を摂取できておらず、そのためカルシウムの補充がなされなかった男の子では、カルシウム不足による骨の発育が鈍化し、一方でカルシウムを補充された男の子では、十分量のカルシウムにより骨の発育が正常化したためであると考えます。

つまり、通常の食事で不足しがちなカルシウムを補充することは、「遺伝×栄養×睡眠×運動」という掛け合わせから期待される限界までに、子供の背を伸ばすのに有用であるということです。

しかし、十分にカルシウムが足りている子供に、それ以上にカルシウムを摂取させても背の伸びが促進される訳ではありません。それどころか、非常に高いレベルでカルシウムを補充すると、腎結石や心筋梗塞のリスクが増加することが観察されているので、注意が必要です。

・タンパク質
真野博(東京農業大学)らによれば、骨のタンパク質の90%はⅠ型コラーゲンからなっており、骨芽細胞(骨を作る細胞)が分泌したⅠ型コラーゲン線維のまわりにリン酸カルシウムが沈着し、ヒドロキシアパタイトとなって骨が形成されるといいます。コラーゲンはタンパク質です。よって骨が成長する(伸びる)ためにはタンパク質が必要なのです。

背が伸びるためにタンパク質が必要であるということを示す研究には、例えば次のようなものがあります。マサリク大学(チェコ)が行った調査では、タンパク質の消費量は高い身長と最も強く相関(タンパク質の消費量が多いほど背が高い)する要因の1つであったとしています。また、誠信女子大学校(韓国)の研究では、より低い身長の子どもたちは、タンパク質の摂取量が少なかったとのことです。これらの報告は、背が伸びるためにはタンパク質が重要な栄養素であることを示しています。

ところで、日本人におけるタンパク質摂取推奨量は1日あたり20〜65gですが、摂取実績は44.6〜79.9gであり通常は不足する心配はないでしょう。

なお、先に述べたマサリク大学(チェコ)の研究では、男性の身長と有意に正の相関(消費量が多いと身長が高い)が認められたのは動物性のタンパク質であり、植物性のタンパク質は負の相関(消費量が多いと身長が低い)が認められたとのことです。成長期には、動物性のタンパク質を摂取する方が背を伸ばせるかもしれませんね。

・リン
先に述べた、骨が伸びるときに生じる軟骨のカルシウムによる石灰化(骨になるプロセス)は、リン(もしくはカルシウム)の欠乏により阻害されます。つまり、リンの欠乏は骨の成長すなわち背が伸びることを妨げるのです。

なお、日本人のリンの摂取目安は1日あたり500〜1200mgであり、摂取実績は692〜1091mgです。成長期の子供では不足する傾向があるかも知れません。

・ビタミンD
小腸や腎臓でカルシウムとリンの吸収を促進する働きのあるビタミンDですが、血液中のカルシウム濃度を維持して骨を丈夫にします。不足すると骨が正常に作られず、骨格の異常や低身長が生じることがあります。

モンテフィオーレこども病院(米国)による報告では、米国の子供のおよそ70%にビタミンDの不足や欠乏が観察されたようです。しかし、日本人では、ビタミンDの摂取目安である1日あたり2.0〜6.0μgに対して摂取実績は4.4〜6.5μgであり、通常では不足することはないでしょう。

背を伸ばすために必要だが不足傾向にある他の栄養素は?

カルシウム以外にも不足がちになるけれど、あまり知られていない栄養素があります。以下に、それらの栄養素について解説します。

・マグネシウム
マグネシウムは、1日あたりの摂取推奨量70〜360mgに対して摂取実績は148mg〜236mgであり、成長期に不足する可能性がある栄養素です。そして、一般にも比較的知られつつあるように、カルシウムと同様、マグネシウムも骨の成長には重要な役割を果たしています。

ベイ・パインズ在郷軍人局医療センターのS.ウォーラックによる学術誌への投稿によれば、マグネシウムの欠乏状態は骨芽細胞の減少とその活性の低下を引き起こし、骨の形成が低下するというラットにおける研究があるようです。また逆にマグネシウムが過剰となると、骨芽細胞の活性低下を伴う骨軟化症様の状態が生じるという研究もあり、マグネシウムの過剰状態は骨の吸収を刺激するということです。結局、マグネシウムは不足しても摂取し過ぎても骨の成長に悪影響を与えるようですね。

・ケイ素
C.T.プライス(Orland Health[米国])らの総括論文は、ケイ素の欠乏は骨格の発達に悪影響を与えるとしており、ケイ素は骨の形成を刺激する栄養素であるようです。そして、米国では、大人のケイ素の摂取実績は1日あたり20〜30mgであり、40mg以上の摂取で骨を丈夫にする効果があったとの報告をふまえ、通常の食事に加えて、さらに20〜30mgを毎日補給することが推奨されるとしています。

しかし、日本でのケイ素の摂取目安は定められておらず、摂取実績も調査されていません。子供への投与についても明確な見解はないようです。ただ、ケイ素は、全粒穀物やシリアル、人参、うすい豆、ビールに多く含まれており、これらは子供が好む食材ではないため、日本の子供でもケイ素が不足している可能性はあるかも知れません。

・ビタミンK
ビタミンKが不足すると、骨に含まれるタンパク質であるオステオカルシンの活性化やコラーゲンの合成がともに低下して、骨の形成が妨げられます。反対に、ビタミンKの補充は、骨を強くするとの報告があります。

米国ではビタミンKは摂取不足となっているようですが、日本では摂取目安は60〜160μgであるのに対し132〜231μgの摂取実績があり、日本の子供がビタミンK不足となる可能性は少ないのではないでしょうか。

・ボロン
これもC.T.プライスらの総括論文からの情報ですが、ボロンがビタミンDの減少を少なくすることを防ぐ(正確にはビタミンDの半減期を延ばす)ことが報告されており、骨の成長にも影響を及ぼすものと思われます。

米国では、不足する人が人口の半数くらいいるとの報告があるものの、日本での実態は不明です。ボロンは、プルーンやレーズン、杏子のドライフルーツ、アボガドに多く含まれています。しかし、これらの食物の消費は日本では日常的ではなく、日本でもボロンは摂取不足となっている可能性があります。

子供の背を伸ばす可能性を高めるその他の栄養素は?

・ビタミンC
ビタミンCは、骨の構成成分であるコラーゲンを作ることに関係し、ビタミンCの補充で骨のミネラル密度を高めるとの報告もある栄養素です。不足すると小児では成長不良が生じることがあります。

東バージニア医学校(米国)の報告では、ビタミンCの摂取量と成長ホルモンの分泌量には正の関連があるとしています。正の関連とは、ビタミンCの摂取が増えると成長ホルモンの分泌も増えるということです。

ビタミンCは成長ホルモンの分泌を促進することで、子供の背を伸ばす可能性があるかも知れません。摂取推奨量と摂取実績から考えて、ビタミンCも成長期に不足する傾向があるようですから、摂取を促進するといいでしょう。

・グリシン
味の素株式会社が専門誌に投稿した総括論文には、グリシンには睡眠の質を改善する効果のあることが記載されています。睡眠の改善は、成長ホルモンの分泌を向上させる効果が期待できます。
・ナイアシン
ノースカロライナ大学(米国)の研究者は、ナイアシンの補給が妊娠高血圧腎症に関連する胎児の発育不全を予防できると報告しており、国立小児保健・人間発達研究所(米国)は、肥満児で低下している成長ホルモンを増やすという研究結果を得ています。

しかし、日本人のナイアシン摂取推奨量は7~16mgNEに対して平均摂取量は7.3~15.1mgNEであり、通常はナイアシンが不足するケースは少ないでしょう。

・α-GPC
母乳に含まれる成分ですが、この栄養素には日本における摂取基準は定められていません。ただ、大豆製品に多く含まれているので食物から摂取することは容易です。

学術情報としては、成長ホルモン放出ホルモンが成長ホルモンを分泌させる反応を、α-GPCと成長ホルモン放出ホルモンの同時投与で促進できるというパルマ大学(イタリア)の報告があります。

・L-アルギニン
アルギニンには成長ホルモンの分泌を促進する作用があることは確かであり、アルギニンの経口摂取で子どもの背を伸ばす効果があったとする報告もあります。

また、アルギニンは、酸化窒素の産生にも関与する栄養素です。酸化窒素は、実験的研究では骨の機械的ストレスに反応して放出され、この放出をブロックすると骨折の治癒が妨げられることが分かっています。

このように、アルギニンが骨の発達に関係することは確かなようです。しかし、アルギニンはシーフードや肉類に多く含まれており、ベジタリアンでもない限り日本での食生活で不足することはないでしょう。

・L-オルニチン
オルニチンとアルギニンの補充で、運動後の成長ホルモンとインスリン様成長因子の血中濃度が増加すると、ポーランド体育アカデミーは報告しています。

オルニチンは、成長ホルモンとインスリン様成長因子および運動を介して、子供の背を伸ばす効果があるかも知れません。しかし、日本における摂取基準は定められておらず、日本では重要視されていない栄養素かも知れません。

・L-シトルリン
これも日本における摂取基準は設定されておらず、オルニチンと同様、あまり日本では重要視されていないようです。

しかし、バレアス諸島大学(スペイン)の報告によれば、訓練されたアスリートに6gのシトルリンを服用させると、運動で誘発される成長ホルモンが約67%も増加するとのことであり、シトルリンには成長ホルモンを介した子供の背を伸ばす効果が期待できるかも知れません。

ところがどっこい、そうは問屋が卸しません!シトルリンに限らずここで述べた成長ホルモンの分泌を促進するとされる全ての栄養素について、日本小児内分泌学会は次のような警告を行っています。以下の警告を肝に銘じておく必要があるでしょう。

『…前略…このように成長ホルモン分泌を促進する効果が明らかな薬でさえ成長を促進することができないことから、薬効が明らかでない「成長ホルモン分泌促進薬」が効くとは全く考えられません。』

・イノシトール
日本での摂取目安は定められておらず、摂取実態も定かではありません。実験室レベルの研究では、イノシトールの補充は、骨へのカルシウムの取り込みを増加させることが観察されています。

イノシトールは、グレープフルーツやオレンジ、プルーンなどに比較的多く含まれているので、オヤツとして食べるといいかも知れませんね。

・パントテン酸カルシウム
動物実験では、パントテン酸を欠乏させると成長停止などが生じるとの報告があります。しかし、パントテン酸は極めて多くの食材に含まれているため、特に欠乏症となることはないと思われます。
・亜鉛
栄養状態が悪いと思われる発展途上国の子供の背を伸ばす効果があったとの報告(アーガーハーン大学[パキスタン]など)はあるものの、栄養状態が良好な先進国の子供に亜鉛を補充して、子供の背を伸ばせるかどうかは分っていません。

なお、日本では亜鉛の摂取実績が5.4〜9.9 mgあり、推奨摂取量の3〜10mgに対してほぼ不足はないようです。

・マンガン
マンガンは、いろいろな酵素の構成成分となっており、酵素を活性化し骨の形成や成長にも関係しています。しかし、マンガンを過剰に摂取すると、子供でも知的障害をきたすという報告(ケベック大学モントリオール校[カナダ])があるので注意が必要です。

推奨摂取量1.5〜4.5mgですが、摂取実績は調査されていないようです。なお、シリアルやパイナップル、牡蠣(かき)、貝類、ダークチョコレート、シナモン、お茶などに多く含まれています。ただ、これらの食材を子供は、あまり好まないかも知れませんが…

・銅
銅はヘモグロビンが形成される時に、鉄を適切な部位に移動させる働きがあります。また、ロシアの動物実験では、銅が不足すると成長期の動物の成長や骨形成を阻害するという結果が得られています。どうやら銅の欠乏は、軟骨芽細胞(軟骨を作る細胞)と骨芽細胞の酵素生成とタンパク代謝の抑制に関連しているらしいのです。

なお、銅は多くの食材に含まれており、実際、摂取実績が0.69〜1.23 mgであり、0.3〜1.0mgという摂取推奨量を超えています。不足する子供は少ないでしょう。

おわりに

これまで記載したように、背を伸ばす(=骨を伸ばす)ためには多くの栄養素を摂取する必要があります。このように多くの栄養素を摂取するためには、月並みですがバランスよく栄養素をいろいろな食材から摂ることが大切です。

そして、栄養素が不足すると骨の成長が妨げられて、背の伸びが悪くなります。しかし、十分に栄養素が足りているところに、それ以上いくら栄養素を補給しても、背を伸ばすことはできません。どのように栄養素をたくさん摂取しても、「遺伝×栄養×睡眠×運動」という掛け合わせから可能となるであろう身長の最大期待値を超えさせることはできないと言っていいかも知れません。

この最大期待値の身長に到達するためには、十分かつバランスの良い食事、適度な運動、そして十分な睡眠を確保することが重要です。ただし、運動も過剰となると却って成長を阻害することがあるので注意してください。栄養についても同じことが言えます。栄養素の過剰摂取で、健康を害したり成長が阻害されることがあるのです。何ごとも過ぎたるは及ばざるが如しですね。