「ノビルン」の名称、すなわち食品表示法上での「誰が見てもそれと分かる社会通念上の一般的な名前」は、「ボーンペップ(卵黄蛋白加水分解物)含有食品」です。そして、カルシウムとビタミンB6、ビタミンDに関しての保健機能食品でもあります。さらに、それだけではなく「ノビルン」には、成長に関係する多くの栄養成分が含まれています。

しかし、成長に有用な成分が含まれているからと言って、必ずしも成長を促進させることができる訳ではありません。ここでは、「ノビルン」の使用で、成長、特に背を伸ばせるのかどうかについて探ります。

筆者紹介:米澤利幸
島根医科大学(現島根大学医学部)卒業
福岡大学大学院修了(医学博士)
日本精神神経学会認定専門医
赤坂心療クリニック院長

まずは「ノビルン」の広告戦略を分析!

公式販売サイトは『ボーンペップが成長の決め手!』とした書き出しですが、成長の中でも身長について次のように広告しています。

『身長は遺伝だけでは決まりません。遺伝が影響するのは20~25%と言われています。つまり大半は別の要素が重要なんです。それは、ずばり!「睡眠」「運動」「栄養」です。』というのです。これは確かにその通りでしょう。

それに続いて『ノビルンならたった2粒だけで、お子さんに必要な栄養素をこんなに備えます』としたうえで、栄養士の永見葉子氏(2018年現在は松江記念病院勤務[筆者調べ])の次のようなコメントを掲載しています。

『骨形成に大切な子供の成長期に、強い丈夫な骨をつくるには食事が基本です。特に、カルシウム、マグネシウム、たんぱく質、ビタミンB6、ビタミンDは重要な栄養素と言えます。-中略- マグネシウムは、カルシウムの働きを促進しながら骨を強くしたり被害を抑制したりするので、特にバランスが重要と言われています。このバランスが悪いと -中略- 骨折や骨粗しょう症の原因にも。また、筋力の低下を招いたりして健やかな成長の妨げになることもあります。普段の食事で -中略- 不足しがちな栄養素を補えるサプリメントをうまく利用するのもひとつの選択です。』

サプリメントの使用は専門家も推奨しているという流れです。

そのあとにマンガの中で、お母さんが悩んでいます。『何かいいのないかなー・・・』『ボーンペップが300mgすごい!試してみよう』とお母さんはつぶやきます。さらに『6ヶ月後』として、『ママ!パンツが短いよ~!!』と子供。『困ってそうで嬉しそう』と注釈されたお母さんが『成長期って洋服代がかかって大変だわ~』とコメントしているのです。

これら広告を見ると、「ノビルン」を使用することで、いかにも背が伸びることを期待したくなりますね。特に、ボーンペップで背が伸びるという印象を持ってしまいがちです。「ノビルン」で背が伸びるとは一言も表現されてはいないのですが、「ノビルン」で背が伸びる効果があると思ってしまうような広告構成です。

「ノビルン」のセールスポイントは?

背が伸びる効果があると思わせがちな広告構成となっているとの評価をした「ノビルン」ですが、公式販売サイトの広告内容から「ノビルン」の第一のセールスポイントを見てみると、まずあげられるのは、『成長の決め手』であると表現しているボーンペップを含有しているということでしょう。このボーンペップは、科学雑誌に研究成果が掲載され、骨成長促進効果などが学会で発表されているとしています。

さらに、1日分の必要量に対して、カルシウム:112%、マグネシウム:110%、蛋白質:116%、ビタミンK:128%、ビタミンB6:140%、ビタミンD:113%の分量を、たった2粒で補えるというのです。先にも述べたように、カルシウム・ビタミンB6・ビタミンDに関しては、保健機能食品であるとしている点は評価できます。ただし、保健機能食品は消費者庁の検査を必要としない自己裁量での表記である点には注意が必要です。

また、安心安全の国内製造であり、GMP(製品の品質を保証する規格基準)認定工場で製造しているとしています。加えて、一般財団法人日本食品分析センターによる検査で、放射性物質・重金属を検出していないという検査結果を強調しています。合成保存料・着色料も含まれていないとのことです。

そして、2017年と2018年の2年連続モンドセレクションの金賞を受賞したお美味しいタブレットであり、定期購入であれば初回は1日あたり66円、2ヶ月目からでも99.3円しかかからないというのです。なお、モンドセレクションのホームページでは、2017年度の応募総数2965点に対して、約91%に当たる2691点(日本の商品が1487点と半数以上を占める)が最高金賞から銅賞までの賞を受賞しています。15万円ほどの審査費用を支払えば、およそ9割の申請商品が受賞できるという賞である点は意識しておく必要がありそうです。

ところで製品とは直接関係はありませんが、企業としてプロバスケットボールチームの大阪エヴェッサの公式スポンサーであり、大阪エヴェッサバスケットボールスクールと大阪エヴェッサチアダンススクールにて子供を応援しているというのは好感が持てますね。

以上をまとめてみると、「ノビルン」のセールスポイントは、成長に有用なボーンペップをたくさん含有し、カルシウム・ビタミンB6・ビタミンDの保健機能食品であり、安全性も高い製品であるといったところでしょうか。

「ノビルン」に含まれている成分は?

「ノビルン」には、子供の成長を促進したり背を伸ばす成分は含まれているのでしょうか。公式販売サイトと販売元の「ノビルン」の説明サイトによると、「ノビルン」には4種類の味が用意されているようです。そして、それらの含有成分には僅かな違いがあります。

共通の原材料は、「砂糖」、「ドロマイト」、「卵黄蛋白加水分解物」、「乳清たんぱく」、「米たんぱく質」、「オリゴ糖」、「スピルリナ原末」、「α-GPC加工食品(α-GPC・加工油脂)」、「L-オルニチン塩酸塩」、「L-シトルリン」、「ステアリン酸カルシウム」、「微粒二酸化ケイ素」、「結晶セルロース」、「香料」、「L-アルギニン」、「甘味料(アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物)」、「ビタミンB6」、「ビタミンK2」、「ビタミンD(原材料の一部に卵、乳成分、大豆含む)」です。

さらに、ラムネ味にはコーンスターチが、ココアチョコにはマルトデキストリンとココアパウダーが、ぶどう味にはコーンスターチとプルランおよびブドウ色素が、パイナップル味にはコーンスターチとプルランが含まれているという違いがあります。

また、栄養成分は味により異なりますが、2粒(3.6~3.8g)あたり、エネルギー 9.35 〜10.44 kcal、たんぱく質 0.29〜0.43g、脂質 0.07〜0.15g、炭水化物 1.97〜2.04g、食塩相当量0.001〜0.002gもしくはナトリウム3.27mg、カルシウム 213〜225mg、ビタミンB6 0.95〜1.00mg、ビタミンD 1.7〜1.98μgが含まれていると明示されています。そして、ボーンペップが300mg含有されているとしているのです。

これら「ノビルン」に含まれている多くの成分のうち、成長に影響を及ぼすと思われるものは、

「ドロマイト(カルシウムとマグネシウムを含有)」

「卵黄蛋白加水分解物(ボーンペップが含まれている)」

「乳清たんぱく(筋肉を増やし筋力を高めるとの報告あり)」

「米たんぱく質(軽度肥満者の善玉コレステロールを増やすという研究結果がある)」

「スピルリナ原末(蛋白含有割合が高く多種の栄養素を含んでおり低栄養者の体重を増やすとの報告あり)」

「α-GPC加工食品(α-GPC[成長ホルモン分泌を間接的に高めるとの報告あり]・加工油脂)」、「L-オルニチン塩酸塩・L-シトルリン・L-アルギニン(それぞれ成長ホルモンを増やすとの報告あり)」、「ビタミンB6(脳の発達や認知機能に影響する可能性)」、「ビタミンK2(骨形成を調節する)」、「ビタミンD (不足すると骨格異常や低身長を引き起こす可能性)」といったところでしょう。

さらにこれらの成分のうち、成長によい影響を与えるほどの成分量が含まれていると思われるのは、販売元が2粒(1日量)でこんなに補えるとしている「カルシウム(1日必要量に対する割合[以下同様]112%)」「マグネシウム(110%)」「蛋白質(116%)」「ビタミンK(128%)」「ビタミンB6(140%)」「ビタミンD(113%)」と思われます。

とくに、カルシウム・ビタミンB6・ビタミンDに関しては、保健機能食品であり十分な量が含まれているのでしょう。ただし、2粒で3.6g(ココアチョコ味は3.8g)しか重量のない「ノビルン」中に、1日に必要な量の116%もの蛋白質が含まれているとは、とうてい考えられません。これは何かの間違いで記載されているのではないでしょうか。

「ノビルン」の成長促進効果は?背を伸ばす効果はあるの?

販売元は、「ノビルン」に含まれるボーンペップに背を伸ばす効果があるように受け取られるような広告を行っています。このボーンペップとは、卵黄に含まれるペプチドの登録商標です。卵黄骨ペプチドや卵黄蛋白、卵黄水溶性蛋白などとも研究報告では表現されています。

商標権者の株式会社ファーマーズによれば、ボーンペップは骨芽細胞(骨を作る細胞)増殖活性を有し、骨伸長素材として大手メーカーでも採用されているとのことです。人間で背を伸ばす効果が確証されている訳ではありませんが、ラットの脛骨を伸ばすという報告(世明大学校[韓国])はあります。人間でいえば脚が長くなる作用があったということになるでしょうか。

また、「Bioactive Food Peptides in Health and Disease」という専門書には、ボーンペップには骨の成長促進作用があり、脛骨における軟骨細胞増殖と骨形成を有意に増加させ、結果として脛骨が長くなるとの学会報告(ラットでの研究)があるとの記載があります。

なお、世明大学校の研究では、卵黄プロテイン(ボーンペップ)を体重1kgあたり100mgの割合で投与しています。体重35kgの子どもでなら3.5gです。「ノビルン」に含まれている10倍以上の量を投与していることに注意すべきでしょう。

「ノビルン」が含有しているとするα-GPCも、成長には影響する成分です。パルマ大学(イタリア)は、成長ホルモン分泌の成長ホルモン放出ホルモンへの反応が、α-GPCと成長ホルモン放出ホルモンの同時投与により向上すると報告しています。ただし、α-GPCを1000mg静脈注射しての結果ですので、げな医療として8番目に記載されているα-GPC加工食品は、「ノビルン」の1日量3.6gに最大でも3.6g÷8=0.45g(450mg)しか含まれていないことになります。この中には加工油脂も含まれているので、純粋なα-GPCは450mgよりもさらに少ないと思われます。また、傾向で摂取した場合には全てが吸収される訳ではないため、静脈注射の1000mgと比べると、「ノビルン」のα-GPCは、成長ホルモン分泌を促進するほどの量ではない可能性が高いと考えていいのではないでしょうか。

続いてカルシウムについてですが、「ノビルン」には、213〜225mgのカルシウムが含まれているとしています。550~1000mgのカルシウムが子どもには必要とされ、平成27年のデータ(摂取実績505~657mg)からすると、カルシウムは不足する可能性が高いと思われます。なお、カルシウムには子供の背を伸ばす直接的な効果はありません。

次にマグネシウムについて考察します。マグネシウムの子どもにおける推奨量は130~360mgです。それに対して、平成27年の摂取実績は223~236mgであるとの調査結果からすると、マグネシウムが不足する子どもはいると推測されます。「ノビルン」には1日必要量の110%が含まれているとしており、マグネシウムの補充には有用であると言えるでしょうか。

さてマグネシウムの次は、L-オルニチン塩酸塩・L-シトルリン・L-アルギニンについて考えてみましょう。成長ホルモンの分泌を促進することが確証されているアルギンでさえ、成長ホルモン分泌試験に使用される量は体重1kgあたり 0.5g(体重30kgなら15g)という大量かつ静脈投与です。最大でもアルギニンが240mgしか含有されていない「ノビルン」に、成長ホルモン分泌促進効果を期待することには無理があると思われます。オルニチンやシトルリンについても同様です。

引き続きビタミンB6についてみてみましょう。「ノビルン」には1日必要量の140%ものビタミンB6が含まれているとしています。ビタミンB6は中枢神経系の発達に必要な栄養素ですが、推奨必要量は0.8~1.5mgに対して平成27年の摂取実態は1.02〜1.16mgです。摂取不足となる子どもがいる可能性があります。ビタミンB6が不足している子どもに「フィジカルB」を使用する価値はあるでしょう。

さらにビタミンDについて評価します。「ノビルン」にはビタミンDが1日必要量の113%ほど含まれているとのことです。ビタミンDの欠乏は骨格異常や低身長を引き起こす可能性があります。しかし、推奨必要量は3.0~6.0μgに対して、平成27年の摂取実態は5.7〜6.5μgです。このデータから見るかぎり、ビタミンDが摂取不足となる可能性は少ないでしょう。あえて「ノビルン」でビタミンDを補充する必要はないと思われます。

以上で述べたことから結論づけるとすると、少なくとも、栄養が不足していない子供の背を伸ばしたり発達を促進する効果を、「ノビルン」に期待することはできないということになるでしょう。

販売元の高光製薬は製薬会社?

東京商工リサーチが保有する企業情報では、例えば、ロート製薬が「業種 :医薬品製剤製造業」であるのに対して、高光製薬は、「業種 :他に分類されない飲食料品小売業」となっています。高光製薬は製薬会社ではないのでしょうか?疑問が残ります。

また、『日本国内のGMP認定工場で製造 Good Manufacturing Practice GMPとはGood Manufacturing Practiceの略で、原材料の受け入れから製造、 出荷まで全ての過程において、製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるようにするための製造工程管理基準のことです。 医薬品の製造をする者が守るべき内容を定めた製造管理、品質管理の厳しい基準です。 高光製薬は、日本国内のGMP認定工場で医薬品レベルの厳しい品質チェックを行い、安定した品質で製造された製品をお届けしています。』として、公益財団法人 日本健康・栄養食品協会によるGMPの認定証をホームページに掲載しています。ところが、この認定証の画像は、拡大表示しても、どこの誰を認定するかを全く判別できない画像処理がされているのです。

そして、平成30年5月15日現在、公益財団法人日本健康・栄養食品協会の認定工場一覧に、高光製薬株式会社という企業は掲載されていません。これに加え、「ノビルン」はGMP認定製品マーク表示製品一覧にはリストアップされていないのです。

これらの情報から類推するならば、「ノビルン」は販売元の高光製薬が、GMP認定工場を持つ他社に製造委託している可能性があるということになるでしょう。以上、ここで述べた内容をどのように解釈するかは、消費者個人の判断ということになるでしょうね。

おわりに

これまで「ノビルン」の成長促進効果、特に背を伸ばす効果や「ノビルン」のセールスポイントおよび販売元について考察してきました。「ノビルン」には多くの成長促進効果が期待できる成分が含まれていることは確かである一方、成長を促進するほどの成分量が含まれているかについては疑問が残るという結果でした。

さらに、「ノビルン」に限ったことではありませんが、栄養素が不足していない子供に栄養素を補充しても、成長がより促進できる根拠はないという点は注意する必要があります。「ノビルン」は、カルシウム・ビタミンB6・ビタミンDに関しては保健機能食品であり、これらの不足を補う目的で使用する価値はあると考えます。

しかし、販売元が強調するボーンペップの摂取という点に関しては、意味のある量を補充できるとは言えないと思われます。したがって、「ノビルン」の使用は、カルシウム・ビタミンB6・ビタミンDの補充目的のみに限定しておくのが良いのではないでしょうか。