フィジカルBについて現役医師の方の意見に耳を傾けてみましょう!

筆者紹介:米澤利幸
島根医科大学(現島根大学医学部)卒業
福岡大学大学院修了(医学博士)
日本精神神経学会認定専門医
赤坂心療クリニック院長

はじめに

「フィジカルB」は、元おニャン子クラブの渡辺美奈代さんが我が子に服用させていることを自らの公式ブログで紹介している栄養補助食品であり、スポーツ指導の専門家やプロスポーツ選手のサポートで実績のあるトレーニングジムも使用を推奨しています。

その効果のほどが相当に期待できそうですね。

では実際には、どの程度の成長促進効果が期待できるのでしょうか?また、公開されている「フィジカルB」の情報はどれくらい信頼できるのでしょうか?

結論から言うと「フィジカルB」に多くを期待するのは難しく、公式販売サイトに記載されている情報にも誤解を招く面があると言えるでしょう。

以下に、その理由を詳述します。

「フィジカルB」販売元の主張は?

「フィジカルB」の公式販売サイトには、成長期の子どもの体づくりに一番重要なものは栄養であると記載されています。同時に、次のようにその根拠を挙げています。すなわち『なぜなら、*この60年間で改善された体づくりの要因は運動や睡眠、遺伝ではなく「食生活」のみ!*肉や乳製品など食生活の欧米化』であり、『子供の成長期には肉などのタンパク質、牛乳などのカルシウム、野菜フルーツなどのバランスの良い栄養MIXが必要!』としているのです。また、スポーツ医科学研究所所長のコメントとして、育ち盛りの中学生は栄養不足で必要な栄養素を摂取できておらず、適切な栄養補給が特に大切である旨の記載とともに、『子ども達のトレーニングを指導して12年「フィジカルB」をサポート飲料として活用しています』とのコメントが掲載されています。スポーツ医科学研究所所長として実名まで公表して推奨しているのですから、よほど「フィジカルB」の効果に信頼を寄せているのでしょう。

次に、公式販売サイトから「フィジカルB」の栄養補助食品としてのセールスポイントを見てみることにしましょう。先に述べたように、子どもの成長には睡眠や運動よりも栄養摂取が一番重要であり、「フィジカルB」には成長に有用な栄養素がバランスよく配合されているとしています。そして、たった1本(4g)で1日に必要な成長成分をたっぷり含んでおり、その量は、1日必要量の鉄が95%以上、ビタミンB1とB2が98~102%以上、ビタミンB6が98%以上も含まれているというのです。さらに、スプーン1杯で1日分の野菜の栄養が摂れるほど栄養豊富で、成長期に必要な50種類以上の栄養成分が含まれているスピルリナも含有されていると記載されています。

そして、プロスポーツ選手(プロゴルファー:池田勇太・プロ野球ソフトバンク選手:大場翔太など多数)のサポートで実績のあるフィジオ福岡も「フィジカルB」を推奨しているとしていいます。また、先にあげたスポーツ医科学研究所所長も「フィジカルB」を推奨し、『フィジカルBをサポート飲料として活用しています』とコメントを寄せています。

まとめてみると、栄養豊富で各栄養素の配合バランスもよく、トレーニングの専門施設やスポーツ科学の専門家も推奨しているというのが、「フィジカルB」のセールスポイントでしょうか。

次項では「フィジカルB」に含まれている成長期に有用な栄養素と、各専門家が推奨しているということについての情報の確度について考えてみます。

販売会社および「フィジカルB」の疑問点?

「フィジカルB」の公式販売サイトには、『健康大国・アメリカでなぜスピルリナが注目されているかというと、スピルリナのたんぱく質が植物性たんぱく質だからなのです』との記載があります。しかし、ウメオ大学(スウェーデン)による過去の文献的考察では、植物性タンパク質の摂取よりも動物性タンパク質の摂取の方が、発育により強く関連するとしており、アメリカでのスピルリナの注目点が、子どもにも適応できるのかという点に疑義があるのが、1つ目の疑問点です。

次に2つ目の疑問点は、アルギニンは成長ホルモンの分泌を助けるけれども、『普通の食事だけでは不足しがちなアルギニンをフィジカルBでしっかりサポート!』という記載です。「フィジカルB」の原材料名にはアルギニンの記載はありません。では、「フィジカルB」にアルギニンは含まれていないのか?というと、そうではありません。スピルリナに含まれるタンパク質は58%強であり、そのタンパク質を構成するアミノ酸の4%弱がアルギニンであるとする分析結果を、ラブラス連邦大学(ブラジル)は報告しています。

つまり、スピルリナ1gに23mgほどのアルギニンが含まれている計算となるのです。「フィジカルB」にどれくらいのスピルリナが含有されているかは分からないものの、1日量4gの「フィジカルB」にはタンパク質を0.54g含有すると表示されています。このタンパク質が全てスピルリナに由来するタンパク質であるとしても、タンパク質含有割合が58%(ラブラス連邦大学)のスピルリナは、「フィジカルB」1日量4g中に0.93gほど含まれていることになるのです。ですからアルギニンは最大で約21mg含まれていることになります。アルギニンが子どもの背を伸ばすという結果を示す研究においては、1日あたり4g(=4000mg)以上のアルギニンが補充されており、21mgという量は、『アルギニンをフィジカルBでしっかりサポート!』というには少なすぎる量ではないでしょうか。

疑問点の3つ目は、『丈夫な体に必要なのは、カルシウム+コラーゲンのコンビ!!「フィジカルB」はカルシウムもコラーゲンのサポートに必要なたんぱく質も備えています!』という表現のうちのタンパク質に関する説明です。食品表示法により明示されている「フィジカルB」の栄養成分表示には、「フィジカルB」4gあたりに『たんぱく質0.54g』と表記されています。これは鶏肉約2.2gに相当する量です。確かに「フィジカルB」には、タンパク質が含まれていますが、『コラーゲンのサポートに必要なたんぱく質も備えています!』と表現するのは、「フィジカルB」に十分量のタンパク質が含まれているとの誤解を生みかねない表現ではないでしょうか。

最後の疑問点は、「フィジカルB」を推奨している施設についてです。有名トレーニングジムも「フィジカルB」の使用を推奨しているとのことですが、明記されているジムのホームページには、「フィジカルB」という名称の記載さえ見つけられませんでした。非公式に推奨しているということなのでしょうか。さらに、スポーツ医科学研究所という施設の実在が確認できないのも疑問点になります。「スポーツ医・科学研究所」という施設は愛知県にあるものの、現在は閉鎖されているようで所長名も確認できません。また、日本プロトレーナー協会がネット上で運営しているスポーツ医科学研究所というものがありますが、「フィジカルB」の公式販売サイトに明記されている所長名は見当たりません。「フィジカルB」の販売サイトに記載されている有名トレーニングジムのFacebookページに、スポーツ医科学研究所の所長と同性のトレーナーが記事を書いており、その記事内容を詳しく説明しているサイトをクリックすると、『最新のトレーニング科学・健康分野の情報発信基地 ライフ・オーダー LIFE ORDER スポーツ医科学研究所』というサイトに行きつきます。

明言はできませんが、「フィジカルB」の推奨をしているスポーツ医科学研究所というのは、有名トレーニングジムのトレーナーが運営するネット上の研究所なのかも知れません。これは全くの憶測ですので、正確なことを知るには「フィジカルB」の販売元に問い合わせてみる必要があるでしょう。

販売会社を含めた「フィジカルB」に評価すべき点はないの?

前項で「フィジカルB」についての疑問点をいくつか上げましたが、「フィジカルB」に評価すべき点も沢山あります。特に「フィジカルB」で、まず第一に評価したいのは、公式販売サイトの説明の中に『毎日「伸びトレ」もしよう』として、具体的な運動(ストレッチ)の方法を指導する記載がある点です。

評価したい第二点は、日本食品分析センターによるセシウム分析と残留農薬および食品分析(成分の分析)の結果報告書の画像が公開されていることでしょう。さらに、『信頼できる国内大手の工場で製造』であるとして製造を他社に委託していることを公表している点です。東京商工リサーチが保有する企業情報によれば、「フィジカルB」の販売元の株式会社ランフォルセの業種は無店舗小売業(各種商品小売)とされており、自社工場を持っていないと思われます。しかし、あたかも自社製造であるかのような販売サイトを構築している他社に比べると好感が持てますね。

「フィジカルB」に含まれる成分とは?

これまで、「フィジカルB」に関する疑問点と評価ポイントを解説してきましたが、「フィジカルB」自体の栄養成分には、成長に有用な成分が多数含まれているのは確かです。その成分についてみてみましょう。おなじみの食品表示法によれば、食品として販売される商品には、その含有成分を成分重量が多い順に原材料名として表示せねばなりません。そして食品表示法上の名称には、誰が見てもそれと分かる社会通念上の一般的な名前を表示するとされています。

「フィジカルB」の食品表示法上の名称は、スピルリナ末含有加工食品です。つまり、「フィジカルB」は、スピルリナをもっとも特徴的な成分としている栄養補助食品ということになります。

このスピルリナは単細胞微細藻類に属するのですが、実際、なかなか秀逸な栄養素材のようです。

世間から注目されるようになったのは、アメリカ航空宇宙局(NASA)が宇宙飛行士の栄養補充サプリメントとして使用し、成功を収めたことに端を発すると言っていいでしょう。

スピルリナにはタンパク質が多量に含まれており、その含有割合は70%にまでも達すると言われています。タンパク質以外にも、ビタミンB12をはじめとする多くのビタミン類や鉄などのミネラル、必須アミノ酸や稀少な脂肪酸などを豊富に含んでおり、スーパーフーズと呼ばれているくらいです。

低栄養状態の子どもにスピルリナを1日10g摂取させたところ、年齢に見合う体重や身長に対する体重の割合を有意に増加させたというコンゴ大学(コンゴ)の報告や、スピルリナで強化されたクッキーは、栄養状態の悪い子どもや女性に有用な補充食品であったとのイラーハーバード大学(インド)の報告が示すように、栄養状態の悪い子どもなどへの栄養補給として使用する価値があります。

ただし、アルギニンのところで述べたように、スピルリナは「フィジカルB」1日量4g中に最大でも約0.93gしか含まれていないことに¡注意せねばなりませんね。

ところで、厚生労働省医薬食品局食品安全部による「健康食品の正しい利用法」というパンフレットには、アレルギーの原因となり因果関係が明確でない報告も含め被害報告が多数あるとする原材料のリストの中に、スピルリナも含まれています。

食物アレルギーのある子どもに服用させるときには、主治医への相談が必要です。

その他、スピルリナ末も含めて「フィジカルB」の原材料名として表示されているものは、難消化性デキストリン、スピルリナ末、還元麦芽糖水飴末/酸味料、香料、増粘多糖類、骨焼成カルシウム、酸化マグネシウム、甘味料(ネオテーム)、ピロリン酸鉄、L-バリン、L-ロイシン、L-イソロイシン、L-リジン塩酸塩、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-ヒスチジン、ビタミンB6、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンDであり、「フィジカルB」には多くの栄養素が含まれているようです。

先に述べているスピルリナをのぞいて、これらについて以下に簡単に解説します。

なお、主成分である消化性デキストリンとスピルリナ以外にも、僅かな成分重量であっても有用な働きをする微量栄養素が「フィジカルB」には含有されています。微量栄養素については、原材料表示からその含有量を試算しても、必要推奨量の基準を大幅に上回る結果しか出ないため、各栄養補助食品に十分量以下の成分しか含有されていない可能性があるのかを検証することができません。その為、「フィジカルB」に含まれている微量栄養素量の試算はおこなっていません。

また、以下の各成分の必要量は6~17歳の値を、摂取実態に関しては7〜19歳の値を記載しています。

・難消化性デキストリン
難消化性デキストリンは、特定保健用食品(トクホ)として表示が可能な成分です。ただし、特定保健用食品として、整腸作用があるとするには3g以上、血糖値の上昇を緩やかにするとするためには4g以上の難消化性デキストリンが含まれている必要があります。これ以下の量であれば、これらの効果を期待できないかも知れません。ところで、難消化性デキストリンは炭水化物です。「フィジカルB」の表示では、炭水化物が2.95g含まれていると表示されています。この炭水化物の全てが難消化性デキストリンであるなら、結構、十分な量が含まれていると言えるでしょう。しかし、整腸作用や血糖の上昇を穏やかにする作用のある難消化性デキストリンですが、健康な子どもの成長を促進する効果は期待できません。ましてや子どもの背を伸ばす効果はありません。
・骨焼成カルシウム
子どもに必要なカルシウム摂取量は550~1000mgです。日本人のカルシウム摂取実態は、平成27年のデータでは505~657mgであり、カルシウムは不足になりがちなミネラルです。これまで述べてきたように、「フィジカルB」には炭水化物が2.95g、タンパク質が0.54g、脂質が0.07g含まれており、これらを除く成分量は0.44gすなわち440mgです。よって「フィジカルB」に含まれるカルシウムの量は440mg未満になります。しかし、440mgもカルシウムが含まれているのであれば、「フィジカルB」をカルシウムの補充に使用する価値ありということになりますね。なお、カルシウム不足は低身長を引き起こす可能性がありますが、身長の伸びは基本的に骨端線で軟骨が伸びてのち、それがカルシウムにより骨化して骨が伸びることで身長が伸びるというメカニズムです。カルシウムには背を直接的に伸ばす効果はありません。
・酸化マグネシウム
子どもの推奨量は130~360mgです。平成27年の摂取実態は223~236mgであり、不足気味となる子どもがいる可能性があります。なお、マグネシウムは、カルシウムやリンとともに骨の重要な成分です。神経の興奮を抑えたりエネルギーを作ることに関係するミネラルでもあります。
・ピロリン酸鉄
推奨量は6.5~11.5mgで、「フィジカルB」には1日の必要量の95%以上が含まれているとしています。鉄は酸素を運ぶヘモグロビンに不可欠な構成成分です。平成27年の鉄の摂取実態は6.6~7.8mgであり、特に生理が始まっている女子では不足する可能性が高まるでしょう。

 

・各種アミノ酸
WHO/FAO/UNUという国際機関から報告された不可欠アミノ酸の推定平均必要量から、3〜17歳の場合での体重1kgあたりの1日のアミノ酸必要量を計算しています。()内は体重が30kgの子どもの場合の必要量を表しています。なお、アミノ酸はタンパク質の構成成分です。

L-バリン     :28〜29mg (0.9g弱)
L-ロイシン    :42〜44mg (1.3g前後)
L-イソロイシン  :21〜22mg (0.7g弱)
L-リジン塩酸塩  :33〜35mg (1g前後)
L-メチオニン   :16〜17mg (0.5g前後)含硫アミノ酸としての記載
L-フェニルアラニン:28〜30mg (0.9弱)芳香族アミノ酸としての記載
L-トレオニン   :17〜18mg (0.5g強)
L-トリプトファン :4.5〜4.8mg (0.1g強)ナイアシンに関係
L-ヒスチジン   :11〜12mg (0.4g弱)

これらの必要量からすると、1日量が4gである「フィジカルB」に含まれている全アミノ酸量は、含有するタンパク質の量と同様であるため、0.54gということになります。「フィジカルB」がアミノ酸の補充に有用であるかに関してコメントするなら、微妙な量しかアミノ酸は含まれていないということになるでしょう。

・ビタミンB6
ビタミンB6は中枢神経系の発達に必要な栄養素です。推奨必要量は0.8~1.5mgであり、平成27年の摂取実態は1.02〜1.16mgです。摂取不足となる子どももいるかも知れません。「フィジカルB」には1日の必要量の98%以上の量が含有されており、ビタミンB6が不足している子どもに「フィジカルB」を使用する意味はあると思われます。
・ビタミンB1
ビタミンB1はエネルギー代謝に関係し、成長や発達および細胞の機能に重要な役割を果たしています。推奨必要量0.8~1.5mgに対し、平成27年の摂取実態は0.90〜1.04mgであり、これも摂取不足となる子どもがいるかも知れません。「フィジカルB」には1日の必要量の98~102%以上の量が含まれているとのことです。
・ビタミンB2
ビタミンB2は、皮膚や粘膜の健康に関係するだけではなく、欠乏すると神経系の変性変化や貧血、成長遅延を引き起こすとされています。推奨必要は0.9~1.7mgであり、平成27年の摂取実態は1.24〜1.27mgです。1日の必要量の98~102%以上を「フィジカルB」は含有するとしているので、ビタミンB2と同様、不足しがちな子どもに「フィジカルB」を使用する価値はあるかも知れません。
・ビタミンD
ビタミンDはカルシウムやリンの吸収を促進して骨を丈夫にし、その欠乏は骨格異常や低身長を引き起こすことがあるようです。推奨必要は3.0~6.0μgと極めて少量で作用します。平成27年の摂取実態は5.7〜6.5μgであり、ビタミンDが摂取不足となる可能性は低いと思われます。サプリメントから補給する必要はないでしょう。

おわりに

最初に述べたように、「フィジカルB」を服用することだけで子どもの成長を促進させることは難しいのではないでしょうか。

しかし、「フィジカルB」には、多くの栄養素が含まれています。

偏食が激しく栄養バランスの悪い子どもに、栄養の補助として「フィジカルB」を使用する価値はありそうです。

しかし、特に身長に関しては、子どもの背がどれくらい伸びるかは、「親の身長×栄養×運動×睡眠時間」といった掛け合わせになります。

子どもの成長を促進して背を伸ばしたいとき、親ができることの1つは、サプリメントを子どもに与えることではなく、食事からバランス良く栄養を摂取できるように、お料理の工夫をしてあげることでしょう。

なお、「フィジカルB」にかぎらず、サプリメントや栄養補助食品を子どもに与えようとするときには、食物アレルギーの有無に注意してください。アレルギーのある方は、必ず医師に相談してから使用するようにしましょう。