子供のための栄養補助サプリメントが数多く開発されています。

今回はその中の1つ「せのびーる」についての記事を現役医師の方に執筆していただきました。

筆者紹介:米澤利幸
島根医科大学(現島根大学医学部)卒業
福岡大学大学院修了(医学博士)
日本精神神経学会認定専門医
赤坂心療クリニック院長

はじめに

「せのびーる」は、子どもなどの栄養を補助するためのサプリメントです。

製造販売元のスリーエーライフ株式会社は、品質マネジメントシステムに関するするISO9001や食品安全マネジメントシステム-フードチェーンの組織に対する要求事項についてのISO22000、HACCP(危害分析重要管理点)、食品GMP(適正製造規範)に認証されており、「せのびーる」自体も410種残留農薬テストおよびヒ素重金属等有害物質テスト、放射能テストに合格しています。ところで「せのびーる」という製品、その名前から「背が伸びる」効果があるサプリメントではないかと連想しがちですが、「せのびーる」の公式販売サイトには「背が伸びる」効果については明言されていません。

しかし、「せのびーる」には、成長や健康維持に必要な様々な成分が含まれていることには間違いがないようなのです。ここでは、「せのびーる」に含まれている成分から推定される「せのびーる」の効果について考察します。

「せのびーる」とは?

「せのびーる」は、「カルシウム・植物性多糖類含有食品」という栄養機能食品です。「せのびーる」の公式販売サイトには『本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません』『本品は、特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません』というような記載がります。

つまり、「せのびーる」は、特定保健用食品のように「身体の生理的機能に作用する成分を含んでいることに加えて、その有効性や安全性、品質などが科学的検証によるデータが審査され消費者庁長官により認定されている食品」ではないということです。

しかし、検証や認定がなされていないことが、有用ではないということではありません。以下に「せのびーる」に含まれている成分から、その効果の可能性について探ってみることにします。

「せのびーる」には何が含まれているか?

「せのびーる」に記されている原材料名を見てみると、

還元麦芽糖水飴・植物性多糖類(米ぬか由来)・ココアパウダー・ゼラチン・亜鉛含有酵母・未焼成カルシウム・酸化Mg・ステアリン酸Ca・香料(材料の一部に乳成分を含む)・微粒二酸化ケイ素・ビタミンC・L-バリン・L-ロイシン・L-イソロイシン・L-アルギニン・ピロリン酸第二鉄・ナイアシン・甘味料・パントテン酸カルシウム・ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンB6・ビタミンD

となっています。原材料名は、含まれる成分が多い順に記載することが定められており、そのルールからすると「せのびーる」に含まれる上位3つの成分は、還元麦芽糖水飴・植物性多糖類(米ぬか由来)・ココアパウダーということになります。

しかし、ミネラルやビタミンなどは微量栄養素といって、量は少なくても効果を発揮する栄養素です。この微量栄養素に注目してみると、「せのびーる」にはかなり多くの体に良い成分が含まれていることになります。

また、製造元の広告では、カルシウムとビタミンD、そして米ぬか多糖体が「せのびーる」の売りであると強調しており、とくにカルシウムとビタミンDは1日の必要量の約80%を2粒の「せのびーる」で摂取できるとしているのです。

そこで、次項では「せのびーる」に含まれている成分の働きと含有量が十分であるかについて検討します。

「せのびーる」に含まれている成分の働きは?その含有量は十分か?

・米ぬか多糖体(Rice Bran polySaccharide略してRBS)
原材料としては植物性多糖類(米ぬか由来)と表記されていますが、米ぬか多糖体(RBS)であると製品外装には書かれています。RBSは、一部ですが消化による変化を受けずに血液中に吸収移行し、回腸にあるパイエル板という組織を刺激して、免疫を担うNK細胞・T細胞・B細胞・マクロファージを活性化させ、免疫作用・抗炎症作用・抗アレルギー作用・抗酸化作用などを向上させる働きがあると考えられているようです。なお、大和薬品株式会社のホームページは、米ぬか多糖体の摂取量の目安は1〜3gとしています。「せのびーる」にどれくらいの米ぬか多糖体が含まれているかは正確には分かりません。しかし、「せのびーる」に含まれる米ぬか多糖体は「せのびーる」の成分としては2番目に多い量が使用されています。「せのびーる」の1日推奨量は2.4gですから、上位2つの成分が同量ずつ含まれ、他の成分が含まれていないと仮定すれば、米ぬか多糖体が最大でどれくらい含有まれている可能性があるかが推計できます。このように計算すると、米ぬか多糖体は最大で約1.2g(2.4g÷2)含まれている可能性があることになるのです。そのため「せのびーる」に、意味のある量の米ぬか多糖体が含まれている可能性は否定できないと言えるでしょう。

なお、「せのびーる」に含まれている他の成分量についても同様の算出法で計算するため、以下では算出法についての説明は省略します。

・亜鉛含有酵母
亜鉛含有酵母には亜鉛が含まれています。発展途上国(筆者注:栄養状態が悪いことが想定される)の5歳未満の子どもに亜鉛を補充すると、それらの子どもの身長を伸ばす効果があったとするアーガーハーン大学(パキスタン)の研究をはじめ、亜鉛の補充は子どもの背の伸びを促進するという研究が複数あります。アーガーハーン大学の報告では、1日10mgで有効性が確認されたということです。そして、計算式は省きますが「せのびーる」には、亜鉛含有酵母が最大で約0.48g含まれている可能性があります。ちなみに商品としての酵母ベースの亜鉛サプリの1つには1%の亜鉛が含まれており、これと同等の割合で亜鉛が含まれていると仮定と、1日量の「せのびーる」に含まれる亜鉛は、0.48mgということになります。これは亜鉛の背を伸ばす効果を期待するには程遠い量でしょう。
・未焼成カルシウムとステアリン酸カルシウム
ご存知のようにカルシウムは、骨や歯などの構成成分で、それらの形成に不可欠なミネラルです。「せのびーる」の1日推奨用量内にカルシウムが275mg含まれていると明示されています。厚生労働省の『「日本人の食事摂取基準」(2015年版)』によれば、3~25歳の人で必要なカルシウムは、1日当たり550(3-5歳の女性)~1000(12-14歳の男性)mgです。よって「せのびーる」で1日の必要量の約28~50%のカルシウムを摂取できることになります。これは補充量として十分に意味のある値です。「せのびーる」は、カルシウムの補給には有用であると考えられます。

以下、説明のない場合には、栄養素の必要量は『「日本人の食事摂取基準」(2015年版)』から引用しています。

・ビタミンD
小腸や腎臓でカルシウムとリンの吸収を促進する働きのあるビタミンです。「せのびーる」の1日推奨量にはビタミンDが2μg含まれています。1日に必要なビタミンDの量は2.5(3-5歳男女)~6(15-17歳男性)μgであり、33~80%の必要量を賄える計算となり、「せのびーる」でのビタミンDの補給は意義があると言えるでしょう。
・酸化マグネシウム
マグネシウムも、骨や歯の形成に必要なミネラルです。マグネシウムの1日当たり必要量は、100(3-5歳男女)~360(15-17才男性)mgとなっています。「せのびーる」には、マグネシウムが最大で約200mgほど含まれていると推計できるのですが、マグネシウムの補給としての表示をしていない点を考えると、栄養機能食品として意味のある量は含まれていないものと思われます。

また、

・ビタミンC(コラーゲンをつくるのに不可欠)

・L-バリン(体の筋肉を作ったりタンパク質の量的バランスを維持)

・L-ロイシン(筋肉の維持や成長を促進)

・L-イソロイシン(筋肉やヘモグロビンを作るのに必要)

・L-アルギニン(免疫力の維持や成長ホルモンの分泌を促進)

・ピロリン酸第二鉄(鉄はヘモグロビンの成分)

・ナイアシン(糖質や脂質、タンパク質からエネルギーを産生する時に必要な酵素を補助)

・パントテン酸カルシウム(糖質および脂質、タンパク質の代謝とエネルギー産生に不可欠)

・ビタミンB1(糖質からエネルギーを産生することに関与)

・ビタミンB2(皮膚や粘膜を正常に保つのを助ける)

・ビタミンB6(タンパク質を分解してエネルギー産生したり、筋肉や血液などがつくられたりする時に重要な働きをする)

などの「せのびーる」の含有成分も、マグネシウムと同じ理由で意味のある量が含まれていないと考えます。

「せのびーる」は使う価値があるのか?

これまで「せのびーる」の成分から「せのびーる」の効果について考察してきました。

しかし、「せのびーる」を服用する、あるいは我が子に服用させる価値はあると言えるのでしょうか、言えないのでしょうか。

前項の考察から、製造元が宣伝するように、カルシウムとビタミンDに関しては意味ある補充ができると考えられます。また、免疫力を向上させる米ぬか多糖体についても補充効果を期待できると思われます。

これは正に製造元が強調している「せのびーる」の特性に合致するものですね。結論としては、「せのびーる」は、カルシウムやビタミンDが不足するような食生活を送っている人には、それらの栄養素を補充するのに有用であると言っていいのではないでしょうか。加えて、免疫力を活性化して健康を維持したりする効果を期待できる可能性もあるかも知れません。

おわりに

ここでは「せのびーる」という栄養機能食品の有用性について考察しました。

繰り返しになりますが、「せのびーる」はカルシウムやビタミンDの不足を補い、免疫力を向上させる可能性があります。

しかし、「せのびーる」という名前から連想される「背(が)伸び(ー)る」というような意味合い、つまり、子どもの背を伸ばす効果は全く期待できません。

カルシウムやビタミンD、ましてや米ぬか多糖体には背を伸ばす効果はありません。この点に注意して「せのびーる」を服用するか否かを決めるようして下さいね。